もうずいぶんと手強い長男(3歳)が、これ以上高みを目指すつもり…?あなたのゴールはどこへあるのですか…?というレベルで、日増しにどんどんパワーアップしており、わたしの短気にもいっそう拍車がかかっておる、どう思う?どうしたらいいと思う?ねえねえどこまでいくと思う??と執拗に夫に迫ったら、深く考え込んだ後、「本当に毎日大変だと思ってる…。いつもありがとう。でも、もう頼れるのは時間しかない。時間が解決してくれるのを待つしかない、と思う…。」と至極まっとうなことを言われ、なるほど、時間に勝る薬はなし、子育てにも確かに当てはまる気がする…、とうなずくわたしをよそに、長男がさっきから「鮭ちょうだい!しゃーけ!あの青いやつ!しゃーけ!!」と怒り狂っている。

わたしはつとめて冷静に、何度も同じ答えを繰り返した。
「いま家に鮭はないよ。」
しかし、そんな台詞は彼の耳には届いていない。怒り狂って鮭をくれと叫ぶばかりだ。
よく見ると、目線が上の方を見ている。

そういえば、食器棚の上に香典返しでもらった未開封のふりかけの詰め合わせが置いてある。青っぽい袋のものがないことはない。
「青いやつって、もしかしてふりかけのこと?」
わたしがイライラしながら言うと、そばにいた夫がふりかけを手にとった。
長男は怒りながら「そーれ!」と言った。

わたしは思わず「違うし!それ鮭じゃないし!」と大きな声で嫌味を言った。
すると、夫がゆっくり振り返り、何も言わずただそっと、手に持った物をこちらに見せてきた。
その青い袋には、はっきりと「さけ」と書いてあった。

なぜ両親も知らない鮭ふりかけの存在を、字も読めない3歳児が知っているのだ。
完全なる敗北だった。

わたしはふて腐れながら、しぶしぶ謝った。